ユニクロの光と影

 

はじめに

 皆さんにとってユニクロのイメージはどんなものですか。私にとってユニクロは、デザイン的にも機能的にも使いやすい服を安く売っている会社だ。さらに最近では、コロナの状況に合わせて「エアリズムマスク」を出したことや、ユニクロ会長の柳井さん個人的が京都大学に100億円を先寄付したことなど、とてもポジティブな印象がある。

 このユニクロと柳井さんの良い面も悪い面を書いた本が『ユニクロ帝国の光と影 (横田増生)』だ。2011年の6月に出版されたため、情報としては古いかもしれない事を念頭に置いて読んでください。

 

 


ユニクロの光の部分


 企業としてユニクロはとても大きな成功を収めていると言える。この成功の元が以下の3つである。
 ・SAP(原材料の調達から小売までを一貫して行う事)
 ・ABC(オール・ベター・チェンジ)革命
 ・3段階に分けた発注

 

SAP(原材料の調達から小売までを一貫して行う事)


 GAPが成功を収めた方法。通常の小売ではメーカー→卸→小売といった製品の流れある。しかし、アパレル業界ではヒットすねる商品がわからないため、各場所で過剰在庫が生じる。SAPを導入し、一括で管理することで、この無駄を大きく減らすことが出来る。その結果、低価格を実現する。さらに自社で完結しているため、リスクの最大値を把握でき、売れ残った商品を値下げしやすいと言ったメリットが出てくる。

 

ABC(オール・ベター・チェンジ)革命

 ユニクロの「選択と集中」がABC革命である。ABC革命のポイントは、いかに売れる商品を早く特定し、早く作るかとなる。そのために、品番数を少なくし、それぞれの発注数を多くする。そのためには、委託工場を厳選し、各工場への注文数を多くすることになり、工場側からすると、ユニクロが重要なお得意様になる。さらに、工場にユニクロの社員を送り込み、日本の店舗で得られた情報と現場の進捗とのつながりを作り、小回りのきく発注を行なっている。

 

3段階に分けた発注


 完成した商品の企画として発注するのが通常の小売であるが、ユニクロはこれを3つの段階に分けている。1つ目の段階は原材料、2つ目の段階は生地の種類と色、そして最後が商品の企画としての発注である。こうすることで、初期に企画していた服の売れ行きが悪くても、2つ目の段階で方向転換することができる。通常の発注では、方向転換できずに大量の在庫が出来上がるのを待つだけとなる。

 以上の方法でユニクロは、無駄のないサプライチェーンで、商品数を少なくして売れる商品に注力しつつ工場とのつながりを強め、ハズレ商品を避けることのできる発注を可能にしている。


ユニクロの影の部分

この本の多くが、影の部分について書かれているが以下の2点についてまとめる。


国内の店舗と海外の工場の長時間労働
柳井さんのワンマン


国内の店舗と海外の工場の長時間労働

 この本の出版後、ユニクロは出版社を訴えている。それは、この本の中に、ユニクロの店長と海外工場の従業員に、ユニクロ長時間労働をさせていたことが書かれていたためである。結局はユニクロの敗訴となった。この本によると、店長は月300時間の長時間労働、海外工場では日付が変わるまで残業をさせていたことが書かれていた。海外工場の長時間労働は、ABC革命により、ユニクロが大口顧客となったことも影響している。

 

柳井さんのワンマン

 ユニクロ=柳井さんという図式がある。後進育成を行ったり、異業種からヘッドハンティングして現場を任せたとしても、数年すれば柳井さんが復帰しご破算にしている。例えば、玉塚さんを社長の後任にし、柳井さん自身は取締役となった3年後、玉塚さんが安定成長思考をとった事を理由に社長を解任している。解任の理由は、減収減益ではなく、あくまで、柳井さん自身の中にある「正常な危機感」によるものである。


おわりに

 著者の横田さんはジャーナリストで、柳井さん、ユニクロの社員やアルバイトへのインタビュー、柳井さんの著書を元にユニクロ(=柳井さん)についてまとめ内容を本にした。私はこれを読んだ後、「柳井さんやユニクロが一般に公開しているコンプライアンスCSRに対して、何も信じられそうにないな」と感じた。
 一度失った信頼を回復させるのは大変だが、現状のユニクロがこの本をきっかけにどう変わっていったのかを知りたくなった。

 ユニクロは今後も、注目したい企業である。