子どもの言葉の発達から探る「使える英語」を身につける方法

はじめに

 こんにちは。
 街中で英語の学習の広告を見ることから、AIの発達で翻訳機の能力が格段に上がりつつある状況でも、英語を話したいというニーズがある事が伺える。そういった英語を身に付けたい人たちに向けて、そもそも言葉を身につけるとはどういう事かを書いた本の『ことばの発達の謎を解く (今井むつみ)』を紹介する。この本では主に、子どものことばの発達について書いているが、英語の修得についても書いているので、その部分をまとめていく。


ことばの発達の3段階

 

1. 発見

 発見とは、単語の意味を発見することではなく、言葉のシステム、つまり言語の中のルールや法則、単語のつながりの存在の発見することである。具体的には、「〇〇する」はいつも動作を表していることや、「が」や「は」の前にはいつも名詞が来ること、または単語の法則(ピッチャーとキャッチャーとバッターの伸ばし棒)などがある。

 

2. 創造

 創造とは、発見によって見つけたルールや法則に則って自分が知っている単語から新しい言葉を作ることである。子どもが創造した言葉の例として、飛行機のことを空飛ぶ車と表現したり、シラサギのことを白いカラスと表現したりする。

 

3. 修正

 修正とは、自身で創造した言葉や表現が誤っている場合、周りの大人などにあわせるように修正することである。創造の過程を経て物事を理解し、その物事の表現を修正する。


単語を覚えるだけでは身につかない、使える英語を身につける方法

 この言葉の発達の段階に沿った学習で、使える英語を身に付けることができる。なぜなら、全ての言語にはそれぞれのシステムがあり、それを理解して学習することで正しい言語を身に付けられるためだ。

 通常の英語学習では、日本語を基準にして英語を勉強する。例えば、「wear」なら「着る」などのように、英単語の意味を日本語の単語に当てはめて勉強する。この方法では英語の正しいシステムを理解することができない。実際、あなたは「wear」と「着る」がどこまで同じなのかご存知ですか?香水をつけることに「wear」を使えるが、香水を「着る」とは日本語では言うことはない。また、「着る」は”服を着る動作”と”服を着ている状態”の両方に使えるが、英語では服を着ている状態にしか「wear」は使えない。ちなみに服を着る動作には「put on」を使う。表にしてまとめると以下のようになる。つまり、同じ意味だと思っていても、言語によって単語が使える意味の範囲が異なるのである。

 

日本語の「着る」

英語の「wear」

着ている状態

着る動作

× (→put on)

香水

× (→香水をつける)


 このように、自身の持っている言語に当てはめるのではなく、英語内の言葉どうしのつながりを知り、言語としてのシステムを理解することで、正して英語が身に付く。また英語のシステムの法則を理解することで、自身の知っている言葉から新しい言葉を創造したり、新しく出会った言葉の意味を類推できるようになり、さらにこれを周りの人のに合わせるように修正していくことでどんどん精度を上げていくことができる。このように、英語の言語としてのシステムを理解した上で学習する事で「使える英語」が身につくのである。


おわりに

 今回、『ことばの発達の謎を解く (今井むつみ)』の、英語の学習の内容に繋がる部分を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。私自身は、翻訳機の性能が十分なレベルにすぐに達すると考えているので、英語の学習をする気はあまりなかったのだが、この本を読み、それぞれの言語のシステムを理解することがその言語圏の理解に役に立つのではないかと考えるようになった。

 この本には、子どもの言語の発達について具体的な例(子どもの言い間違いなど)や研究結果が載っている。子供達の「言葉の発達」が私たちのイメージするものとは全然違い、驚かされると思いう。お子さんがいらっしゃる方は一度読んでみると、子どもの言葉の変化を楽しめるようになると思う。気になる方は是非手に取って見てください。

 ではでは。